第3話「心のオアシス・ギターセンター」

 

「ねえ、ギターセンターでも行ってきたら?」
イラスト描きの仕事をしているカミさんが、かならずつぶやく時がある。そう原稿のしめきり日。
くわばらくわばら、こんな時は邪魔をしないよう集めておいたチラシを片手に、さあ出陣だ僕の住んでるここアメリカには、”ギターセンター”というすごい場所がある。なにがすごいかって?
そこにあるギター全部を弾いていいんだぜ!まるで、「触り放題のパンダ動物園」みたいじゃないか!
全米展開の大手楽器チエーン店 “ギターセンター”には,ギターのみならず、ドラムス、ピアノ、楽譜、音楽関係のあらゆるものを売っている。 ここカリフォルニアだけでも31店舗あるが、ボクの一番のお気に入りは、ハリウッド店。ライブの殿堂”ハウス・オブ・ブルース”のあるサンセット道りにあり、セレブも集うゴージャスな場所だ。”ギターセンター・ハリウッド店” エンターテイメントの街の名に恥じず、この店は飽きさせない。
有名なのが、”ロック・ウォーク”と呼ばれる床。
B・B・キング、エリック・クラプトンと有名ミュージシャンの手形が埋め込まれている。
スティーブ・ヴァイの左手が6本指なのが笑える。尊敬するお歴々の手形を踏まないように進むと、ボクの敬愛する、エディー・ヴァン・ヘイレンのステージ周りを再現したセットが飾ってある。白黒ストライプのフランジャー、ワウペダル、”大聖堂”に欠かせないディレイ。うーん、エディーの靴底のにおいがプンプンしてきそうだ!
そして、入り口のドアを開けると、目の前に広がるギターの大海原!
この眺めは圧巻!ここは、ギターの王宮、いや魔宮と言った方が正しい。なぜなら、奥に行けば行くほど、お宝が埋まっている。だが、入り口付近は中古ギターコーナーだ。ここはここで外せない。冷やかし半分中古コーナーをあさってると、どこからともなく、聞き覚えのあるフレーズが流れてくる。フッフッ!いるぞ、いるぞ!今日もギターリフ野郎が。ここはギター野郎の心のオアシス、週末ともなるとリフギタリストが集う。
これは”マスター・オブ・パペット”これは”クレージー・トレイン”だな。
ボクも早く参加せねば!基本的に店内に飾ってあるモノは全て弾いていい。店員のお兄さんに頼めば快くギターを壁から外してくれる。さて、今日はどんなギターがそろってるかな?ズラっと壁に吊るされたお宝を拝見すると、フェンダー・マスタービルダー・タッド・クラウスさんのストラトがあるぞ。かの巨匠もボクの近所に住んでる。あとは、、おお!スラッシュのシグネーチャー・レスポール!!!!
弾きたい!買えないのはわかってるケド、とにかく弾いてみたい。大人になって、大人買いが許されるようになっても買ってはいけないモノがあることはわかっている。しかし、、、ギターは何本あっても良い!いきなりスラッシュ・シグネーチャーは気が引けたので、タッドさん作のフェンダーを壁から外してもらった。店員のお兄さんがアンプを繋ぎながら「ピックは?」と尋ねてくれる。もちろんポケットに入ってるさ、”Six Strings Town”の住人だからね!
アンプの横のスツールに腰掛け、チューニングを調整する。いくら弾き放題とはいえ、マナーはわきまえておこう。ボリュームは0から始めて3ぐらいにおさえておこう、絶対に11なんかにしないように。そして決して「天国への階段」は弾かないように!なぜって?
そういう映画ネタがあるんだ。(ウェインズ・ワールド参照)
日本のみんなも弾きに来てくれ、リフだけでもいいからさ!
じゃ、またな!