第5話「天国からのバンドメンバー募集」

危うく死にかけた!と、言っても、まあ、飲み過ぎてアパートの階段から転げ落ちた、そんなところなんだが。
酩酊した意識の中でボクは夢をみていた。
夢のなかでもボクはバンドをやっていた。
夢のなかのバンドには死んでしまったミュージシャンが沢山いた。
飲み過ぎて死んだボンゾ、A7Xのレブ君、ライブ中の悲劇にみまわれたダイムバック、そして事故で他界したランディ・ローズ。
そんなんだから空いてるポジションはベーシストだけで、ボクはベースを渡された。
妙に重いベースを抱きながらボクは叫んでいた。
「ボクはギターが弾きたいー!!!」
  みんな、ランディー・ローズの事は知ってるよな。オジー・オズボーン・バンドのギタリストで、飛行機事故で死んだのは82年だったかな?
実は彼のお墓がすぐ近所にある。いつもは静かな墓地なんだが、ちょっとした観光スポットだ。
彼の命日3月19日になると、そこら中から彼の曲が流れ、集まったファン目当てに露天商が安っぽいTシャツを売りさばく。
その下世話な雰囲気が嫌いなボクは日をずらしてお参りに行く。
ある晴れた日曜日、ボクは早起きをして、お供え用のピックをポケットに入れ、彼の眠る”マウンテン・ビュー・セメタリー”に車を走らせた。
きれいな花でうめつくされた墓地の入り口ゲートを抜けるとすぐに、彼のお墓がある。高さ2メートルくらいの白いオブジェでギリシャのパルテノン神殿みたいだ。中央の壁には”RANDY RHOADS“1956-1982と刻まれている。オジーに認められ、”ミスター・クローリー”、”クレイジー・トレイン”とたて続けにヒットを飛ばし、上昇気流に乗り上げた矢先の事故だったよな、25歳か?もっと弾きたかっただろうな、ギター。
なぜだか、お墓の正面全体が刑務所の独房のように鉄格子に覆われている。カミさんいわく「きっと自分が”ロックという名の刑務所に閉じ込められた囚人”って言いたいんだよ!」………カミさんよ、それはアルカトラスだ。よく見ると墓石の所々に赤いシミがある、口紅のあとだ。
若くしてこの世を去った天才ギタリストをいつくしんで、多くの女性ファンは墓石にキスをするらしい。男のボクは、そんな事はしない。
彼のギターと共に成長した元ギター少年のボク、白い墓石にほほを押し当てて、耳をすますと、、、、ほら、聞こえてきた”クレージ・トレイン”がさ!
   ランディの命日の前後日、もとヴァン・ヘイレンのボーカル、サミー・ヘイガーが”RED”という著書を出した。彼の音楽人生を書いたものだが、ヴァン・ヘイレンの内部暴露本とも言える内容で、特にエディーの事がずいぶんと、”悪く”書かれてた。かなり荒れた生活をしているらしい、ボクのギターの神様は。一時期彼らがスタジオ入りしたというニュースが流れたが、その後どうしたんだろう?よく、エディーとランディーは比較される。
ミュージシャンは死んでしまうと良い思い出だけが語り継がれ、伝説となる。死んでしまって、神とあがめたてられるランディーと、悪口を言われながらも生き永らえているエディー。どっちがいいかボクにはわからない。
けどさ、死んじゃったら大好きなギターが弾けないんだぜ。
そりゃ「天国バンド」に入れてもらってもいいけど、空いてるのはベースだけだぜ。
しぶとく生きて、いいギター弾こうぜ、ボク達はさ!
じゃ、またな!